
こんにちは、静岡ブースト管理人の日下部です。
今回ご紹介するのは、御前崎市佐倉にある「桜ヶ池(さくらがいけ)」です。
山あいにひっそりと佇むこの池には、龍神が眠るという古い伝説が残っていて、
今でも地元で大切に守られている不思議な風習「お櫃納め」が続けられています。
歴史があって、自然も美しくて、静かな時間を過ごすにはぴったりの場所。
今回はいつものノブさん&マミさんと一緒に、そんな桜ヶ池の魅力をたっぷりご案内します。
第一章:遠州の里山にたたずむ静かな池


御前崎市の佐倉地区。
山々と田園に囲まれたのどかな里に、桜ヶ池は静かに広がっています。
東・西・北の三方を原生林に囲まれ、池の水面は深い緑色。
その静けさは、まるで時間が止まったかのような感覚を呼び起こします。
春には堤の桜が風にそよぎ、秋には木々が色づき、四季の移ろいが優しく包んでくれます。
池の周囲には遊歩道が整備されており、歩くと鳥のさえずりや風の音、木々のざわめきが耳に届きます。
訪れる人々は少なく、観光地のような喧騒もありません。
ただ、自然のなかで、自分自身と向き合うような時間が流れていきます。

















うわあ…本当に静か。風の音しか聞こえない…



うん。こういう場所に来ると、自分の気持ちも静かになってくるよね
第二章:龍神伝説──皇円阿闍梨と桜ヶ池


この池にまつわる伝説の主は、比叡山の高僧「皇円阿闍梨(こうえんあじゃり)」。
平安時代末期、皇円は56億7000万年後に現れるとされる**弥勒菩薩(みろくぼさつ)**を信じ、
その再来を待つために、龍神の姿となって池に入定したといわれています。
この伝説は、桜ヶ池を「遠州七不思議」のひとつとする大きな理由のひとつです。
池には龍が棲んでいる──そう信じられ、今も多くの人が祈りを捧げに訪れます。
池の水は底が見えないほどに深く、かつては池底に穴があり、遠州灘まで通じているとも語られました。
龍神伝説とあいまって、神秘的な空気が池全体を包んでいます。









皇円阿闍梨って、未来の仏様を待つために龍になって沈んだんだよね?なんか切ないけどカッコいいね



そうだね。自分の命を信仰のために差し出すって…ほんとにすごい覚悟だよ
第三章:「お櫃納め」──池に捧げる祈りの儀式


桜ヶ池では毎年、秋のお彼岸(9月23日頃)になると、「お櫃納め(おひつおさめ)」という神事が行われます。
これは、若者が立ち泳ぎで池の中央まで進み、赤飯を詰めた檜のお櫃を池に沈めるという伝統儀式です。
池の龍神に供物として捧げることで、その年の平穏と五穀豊穣を祈るという意味があります。
使用されるお櫃は、直径40cmほど。中には約4升半の赤飯が詰められます。
儀式後、数日で空のお櫃が水面に浮かび上がるとされ、それは「龍神が召し上がった」証とされるのです。
この伝統は850年以上も受け継がれており、静岡県の無形民俗文化財にも指定されています。





若い人が毎年池に入って赤飯を沈めるって、すごい神事だよね



それが850年も続いてるって…地元の人たちの気持ち、本当に深いんだね



桜ヶ池は、地下で信州の諏訪湖と繋がっている・・・とも言われています。お櫃納めに使ったお櫃の破片が諏訪湖に浮いていたという話を僕は聞いたことがありますよ。
第四章:池宮神社──龍神を祀る聖地


池の南岸にあるのが「池宮神社(いけみやじんじゃ)」。
この神社の創建はなんと西暦584年。飛鳥時代にさかのぼります。
ご祭神は水の神「罔象女神(みつはのめのかみ)」と、龍神となった「皇円阿闍梨」。
本殿は小さな祠のようなたたずまいで、ひっそりと池のそばに建てられています。
境内には古木が並び、神社自体も大きく宣伝されているわけではないため、
訪れると心の奥にすっと何かが降りてくるような、清浄な空気を感じることができます。
また、江戸時代の徳川慶喜が信仰していたとも言われており、歴史の厚みを感じさせる場所です。











池のそばに神社があるって、なんか守られてる感じがするね



小さくて素朴だけど、あったかい空気が流れてる感じがする!
第五章:自然のなかで心をほどく


桜ヶ池の魅力は、ただ歴史や伝説だけではありません。
その場に立つと、自然の音と香りが五感を刺激し、知らず知らずのうちに心がゆるんでいきます。
池のほとりに腰を下ろし、水面を眺めていると、鳥が水辺に降りてきたり、風が葉を揺らしたり──
日常では見逃してしまいそうな、小さな命の動きが、しみじみと心に沁みてきます。
時間が止まったような空間で、自然と、そして自分自身と向き合う時間。
それが、桜ヶ池が持つ、もうひとつの“力”なのかもしれません。







ただ景色がきれいってだけじゃなくて、自分の中が静かになるっていうか…



わかる。心の中のザワザワが、すーって消えていく感じがするよね
第六章:アクセスと周辺情報


所在地:静岡県御前崎市佐倉1252付近
アクセス:東名高速「掛川IC」から車で約40分、または「菊川駅」から車で30分ほど
駐車場:池の南西に数台分の無料駐車スペースあり
見学時間:特に制限なし(夜間照明はありません)
池周辺に飲食店や売店はないため、事前に準備をして訪れるのがおすすめです。
トイレは池宮神社近くに簡易なものがありますが、気になる方は近隣の公園等で済ませておくと安心です。



観光地っぽく整備されすぎてないのがいいよね



うん。静けさも空気も、ぜんぶ自然のまま残ってるのが魅力だなあ



桜ヶ池の近くにあるお土産屋さんで売っている「麩菓子」が美味しいんです。僕は行くたびに2本ずつ買って帰ります。
第七章:遠州七不思議めぐりの旅へ


桜ヶ池は、「遠州七不思議」のひとつとしても知られています。
他にも、浜岡砂丘に現れるという「波小僧」や、秋葉神社の「火の神様」、可睡斎の天狗伝説など、
この地方には古くからの民話や伝承が数多く残されています。
“ちょっと不思議で、どこか懐かしい”──
そんなスポットをめぐる旅は、心をほんのり温かくしてくれる体験です。



次は波小僧にも会いに行こうか。どんな子なのか気になるよ



遠州七不思議めぐり、けっこう楽しいかも♪
【おわりに】


桜ヶ池は、ただの「池」ではありません。
そこには、千年以上の信仰と、静かに受け継がれてきた祈りがあります。
それは見えないけれど、訪れた人の心にじんわりと残る、あたたかな“気配”。
誰もが日常の中で忘れがちな「静けさ」や「やさしさ」が、この場所にはありました。







ノブさん、桜ヶ池ってほんとに“祈りの池”だったね



うん。あの静けさと空気、ずっと心に残りそうだな